ファシリテーション お悩み解決Q&A
Q.ファシリテーターって会議や話し合いの時に仕切る人、司会者なんだと思っていましたが違うのですか?
A.そうですね。ファシリテーターは司会者でも仕切る人でもありません。ただ、世の中にはファシリテーターのことをそういうふうに捉えて書いているものも少なくはありません。その場合は、会議ファシリテーターのことを指していることが多いと思います。
Q.グランドルールをみんなに守ってもらうためにはどうしたらよいのですか?
A.グランドルールを自分たちで作ることから始めましょう。自分たちで決めたということで守りやすくなります。また、話し合いが進むにつれ、忘れてしまうこともあるので、模造紙などに大きく書いて見えやすい場所に貼ると意識しやすいと思います。グランドルールに反したことをしてしまった人には注意をするよりも、書いてあるところを手で示して自ら気がつくようにしたほうがいいでしょう。
Q.目的、目標、進め方など、なんでもみんなで決めなければならないのでしょうか。
A.場合によっては、すでに決まっている場合もあると思います。その時は、最初に確認作業をするといいでしょう。全く説明しないというのはあり得ないことですが、資料として示すだけで「読めばわかるだろう」というのではなく、なぜこう決まったのかという理由を説明し、質問をしてもらうなどの相互の意思確認をすることで、話し合いや人間関係がうまくいくでしょう。
Q.「傾聴」って、「良く聴く」とか「心で聴く」っていう説明ですが具体的にはどうしたらよいのかわかりません。
A.頭の中で相手の言っていることを反復するとうまくいくと思います。そのためには、相手をしっかりと見て表情や動作なども観察する必要があります。最初は聞いているつもりが、段々と相手の話に対してのアドバイスや自分の意見、他の人がそのことについてどのように話していたかなどのことを考えがちです。最後まで相手の話に集中し、話を聞き終わってから、考えるようにしてみるとうまくいくと思います。傾聴に慣れてくると、意識せずに聴くことができるようになりますので頑張りましょう。
Q.正直言って「場を読む」ってわかりません。どうすればよいのでしょうか。
A.最初はみんなの様子を観察するといいと思います。ファシリテーターは全体を俯瞰的に見る必要がありますが、最初からそれは無理だと思います。一人一人の様子をしっかりと見てみましょう。その時に気をつけたいのは、不機嫌な人や自分に好意的だと思う人がいても、そこに感情移入しないことです。全ての人を同じように観察し、全体の雰囲気を掴むところから始めましょう。
Q.ブレーンストーミングという手法でみんなに意見を出してもらうのですが、うまくいかないことがあります。うまくいくコツを教えてください。
A. ブレーンストーミングという手法は、「自由奔放」「批判厳禁」「便乗歓迎」「質より量」の4つのルールで、アイディアを出していくものです。
1つ目のコツは、意見を「見える化」していくというものです。付箋に書いて意見をたくさん出すというテクニックはみなさん経験があるのではないでしょうか。付箋に書かずに、自由に話をして、意見をホワイトボードなどに書き留めていくというやり方もあります。何も書かずに自由に話すと、どのような意見が出たのか分からなくなり、対話ではなく会話になりがちです。
2つ目のコツは、ファシリテーターが効果的な質問をすることです。効果的な質問とは、いい質問をいいタイミングで出すことです。ブレーンストーミングの良いところはそれぞれの意見が影響を出し合って相互作用で新しいアイディアが生まれていくところにあります。その連想をつなげるためにはファシリテーターが質問を出して話を広げたり横道に逸れてしまった話を本質に戻していったりということをしなければいけません。
こう言えば必ずうまくいくという魔法の言葉はありませんが、何度も体験するうちにうまく質問ができると思います。
Q. 質問をしても誰も答えてくれません。そのような時には指名してもよいのでしょうか?
A. 会議などの場合は、指名しなければならない時もあると思います。指名する時のコツは、表情を読み取り、「何か言いたそうだな」と思われる人に対して心理的圧力をかけないように気をつけ、「どうでしょう?」「いかがでしょう?」などと声をかけてみましょう。あまりにも曖昧な質問だと答えにくいということもありますが、反対に問い詰めるような口調にならないようにも気をつけましょう。
全員が目を伏せて下を向いてしまっている時には、場づくりができていない場合が多いので、一旦休憩に入り(1分でも構いません)仕切り直しましょう。
ワークショップなどの場合は指名せずに、アクティビティなどをうまく取り入れ、場を和ませます。発言できる雰囲気を作るのが大切です。
リアルの場であれば、休憩中の雑談をさりげなく聞いておき、どこに問題があるのかを考えます。休憩時間はみんなにとっては休憩ですが、ファシリテーターにとっては、次の話し合いを良くするための情報収集の時間です。
Q. 質問の具体的な言い方を教えてください。
A.・オープン・クエスチョン→「どのような•••?」のように、話を広げる質問
・クローズド・クエスチョン→「あなたは•••ですか?」のように返事が「はい」「いいえ」になる質問
・拡大質問→「他に何が考えられますか?」これまでの意見以外を求めている。
・収束質問→「どれが重要でしょうか?」たくさんの意見の中から選ぼうとしている。
・仮定質問→「仮に〜だとしたらどうしますか?」否定的ではなく肯定的に
・強制質問→「あえて言えばどうでしょうか?」逃げられないように問いかける。
・リレー質問→「同じ意見の方はおられますか?」意見を繋いで問いかける。
全て一例ですので、友達同士で「こんなふうに質問すると、こう答えることができるよね」といった感じで質問の形を見つけてみてください。
Q. 合意形成というけれど、何なのかよく分からないし、多数決で決めるのが早くて好きです。
A.いい感じの雰囲気の場を作れ、たくさんの意見を引き出せて、わかりやすく整理もしました。けれど、意見をどのようにまとめたらよいのか分からないことってありますよね。よく「落とし所を見つける」という表現を使っている人もいますが、その時に「誰かの意見を選ぶ」のではなく「みんなが納得できる結論を作る」のが合意形成です。合意形成のためのさまざまなスキルがありますが、実は合意形成の成功の秘訣は、1、全員が肯定されている安全安心の場が作られている。2、意見がしっかり話され、全員が満足のいく対話になっている。3、意見がうまく整理されており、「見える化」などできるだけ情報がぶれないようになっている、という、3つの条件がクリアされているということなのです。ですから、最初の頃は、1、2、3がうまくいっていないことが多く、合意形成のスキルを使ってもうまくいかないことも多いと思います。そんな時には、多数決で決めることがあってもいいのではないでしょうか。その時の多数決のコツは、意見出しの後、整理してたくさんある意見を整理した後すぐに多数決をせず、意見の内容について一つ一つ議論を尽くしていく。熟議を重ねるうちに目的に合わないものや現実的ではない意見などがわかってくるので、自然に数が減ってきます。その後、一般によくやる手上げ方式ではなく、模造紙やホワイトボードに意見を書き出して、一人で複数票を持ち、誰がどの意見に賛成したのかを意識しないで済む方法で(例えばシールを貼るなど)投票をします。最後に得票が集中したものについて議論をして決めていきます。その時のコツは、参加者の表情を観察し、しっかりと意見を聞いていくことです。
Q. 会議の時、私はファシリテーターとして頑張っています。参加者はダンマリを決め込んだり、意見を考えてくれなかったりと全く協力してくれません。参加者は何もしなくてよいのでしょうか。
A.スケジュールに追われていることが多く、「まずは会議」ということが多いのですが、このような場合は会議の前にワークショップ型の話し合いをするなどでチームビルディングを行います。会議は会議のためにしているのではありません。何かの目的を達成するための手段なのです。その目的について、全員で話し合うといいでしょう。顔を合わせたことがない人ばかりであれば、最初に他己紹介などで人となりを知ってもらい、安全安心の場を作っていきます。その時にグランドルールや会議の進め方などについても話し合って決めていくといいでしょう。ファシリテーターを順番にやっていくという手もあります。ファシリテーターだけではなく、書記(ファシリテーション・グラフィッカー)、タイムキーパーなどの役割がありますので、みんなで分担を決めてもいいかもしれません。ファシリテーターと参加者は全く同じ立場で参加していること、会議は参加者が作り上げていくものだということを自覚してもらいましょう。「そんな時間はないです」と思うかもしれませんが、ワークショップをやったほうが結果的にはうまくいき、会議も早く終わると思います。「急がば回れ」です。
Q. 講座を受けてスキルは身に付けたのですが、実際の会議の時にはうまくいきません。
A.講座のようにいかないことは普通です。もしも教科書通りに進むときは、ファシリテーションのスキルを参加者に押し付けているかもしれません。自分でうまくいったという時ほど参加者は不満を持っているものです。
とはいえ、身に付けたスキルは実際の会議で役に立たなければ意味がありません。そのためには、「練習をしたい」と言ったうえで仲間や友人を誘いましょう。「今度みんなで遊びにいく場所を決める」などのテーマを設定し、練習するといいでしょう。テーマは、わかりきった結果になるものよりも結果が出にくいものにするのがコツです。多様な意見が出るので練習になります。
いつもの会議のメンバーで練習できると最も効果はあるとは思いますが、それができるメンバーであれば、すでに本番もうまくいっているかもしれません。
会議はテクニックだけではうまくいかず人間関係に左右されることが多いので、普段から人間関係を潤滑にしておくことも大切なコツです。
前もって、不満や希望を聞けるような雑談をしておくとファシリテーションをする時にも役に立ちます。
Q. 私たちの会議では最初に報告の時間があり、次に決定事項の時間を設けています。場合によっては報告に時間がかかってしまい、時間がないので前もって事務局が作った案を採決することになります。参加者が一方的に話を聞かされ、意見を言うこともできずに終わってしまうパターンです。意見を聞いていると会議が長引いてしまうので仕方がないとは思いますが、どうにかできますか?
A.会議には「報告会議」と「決定会議」があります。定例会議などは「報告会議」にあたるものが多いのではないでしょうか。報告会議と決定会議を分け、報告会議で話される内容は前もってメールを送っておき、内容は「全員が読んでいる」という前提で質問や意見を話すことにすると「報告会議」が一方的ではなくなります。
例えば1時間を予定している会議の場合、「1時間の会議なので報告の時間は20分にしませんか?」などの提案をしておき、「4つの報告があるので一人5分でお願いします。」と時間を明示しておくと話す方も時間を意識しやすくなります。最初に1分くらいの時間で、報告の優先順位を決めておくのも良いでしょう。メールを読むだけで済む案件などもあります。全てを同じように扱わずに参加者全員で優先順位を決めましょう。
決定事項についても同じように時間と優先順位を決めておきます。今決めなければならない訳ではない案件は次の会議に回すことができますし、40分ではとてもじゃないが決められない案件などは別に会議の日程を定めることで、しっかりとした話し合いをすることができます。そのようにして案件を整理し、今回の会議で決めなければならないものだけを話し合います。
会議を効率的に進めるコツは、準備をすることと、最初に「どの案件を何分で優先順位はどうするか」と言う話し合いをしておくことです。
ホワイトボードや模造紙に決めたことをしっかりと書き留め、全員に見せながら議事を進めるとうまくいきます。
Q. 「安全安心な場」「心理的安全性」などと言いますが、具体的にはどうすればいいのですか?
A.「場づくり」をしっかりするということに尽きるのですが、ファシリテーターの魔法の言葉というものがありますので、ご紹介いたします。
「正解、不正解はありません。」というものです。人は正解を話したいものです。正解を求めると「自分の意見は間違っているのではないか」と思い、話したくなくなるものです。ファシリテーターの一言で「何を言っても大丈夫」と感じることができれば成功です。場を盛り上げるためにわざと突拍子もないことを話す場合もありますが、そのような話も大歓迎だということを伝えることも大切です。なぜなら、周りをリラックスさせる効果があるからです。
他の方法として、グランドルールの一項目に「批判しない」と入れておくことです。意見に対して批判的なことばかり言う人がいると、その場は安全な場所ではなくなり安心できません。意見を言うと批判される、攻撃されると思ってしまうのです。場が崩れていると思ったらまずは1分ほど休憩を入れます。人は1分間黙っていると落ち着きます。その後で、グランドルールを指し示して「この項目を思い出してください」と静かに話しましょう。その時に批判をしている人をじっと見たりして、その人を悪者にしてはいけません。おそらく、うっかりと批判してはいけないことを忘れていただけなのです。それでも気がつかなければ、グランドルールを見せることを繰り返しましょう。場の中に「批判しない」という空気が生まれてくるでしょう。
Q. オンラインで会議をうまく運営する方法を教えてください。
A.オンラインの場合は、まずは気にしないといけないのが、ネット環境のことでしょう。全員が同じ環境で参加しているわけではありません。「パソコンからお願いします」と言っておいてもスマホから参加する人もいます。私の体験では、オンラインの授業で「何か雑音が入る」と思ったら、学生がドライブデートをしながら参加していることがわかった時もあります(笑)
もちろん、「パソコンからの参加をお願いします」というアナウンスは大切ですが、そこに頼ってしまうと大変なことになります。例えば、資料を見ながらの検討をしようとした時に、「パソコンだから見ることができるはず」と思わずに、前もって資料を送り、読んでおくことなどをお願するといいと思います。
画面に顔を出す、ミュートを外すということをお願いしましょう。ファシリテーションは、表情、声の調子、動作など複合的なものを見ていかなければできません。オンラインで良いこともあります。それはマスクがないことです。マスクをしていると目の表情だけで判断しないといけないこともあります。表情を読むという意味ではオンラインの方が有利かもしれません。
画面越しで一番困るのは「目線が合わない」ことではないでしょうか。これは自分の画面の中で相手を見て話すしかないと思います。そして、話している人をアップにせず、全員が画面に映るような設定にしておくことが大切です。画面に全員映っていても表情がわかる大きさにしようとすると、大人数の会議はむずかしいので、人数調整をしましょう。
オンラインでは発言と発言の間に「・・・」2、3秒の沈黙ができます。また、盛り上がると言葉がかぶることもあります。そんなことが度重なると、発言すること自体が嫌になってしまいます。それを防ごうと思うならば、発言の間にファシリテーターが発言者に促す言葉をかけることです。すると安心して話すことができるようになります。
オンラインでは模造紙やホワイトボードに書くことができません。今ではグーグルドライブなどオンラインの見える化ができるたくさんの良いツールが出ていますので検索して使ってみてください。最も簡単に使えるのはチャットに書き込んでいく方式です。
ファシリテーションは、オンラインであっても対面であっても基本は同じです。これからは、対面で会うことのない知人が増えていく時代ではないでしょうか。
A.そうですね。ファシリテーターは司会者でも仕切る人でもありません。ただ、世の中にはファシリテーターのことをそういうふうに捉えて書いているものも少なくはありません。その場合は、会議ファシリテーターのことを指していることが多いと思います。
Q.グランドルールをみんなに守ってもらうためにはどうしたらよいのですか?
A.グランドルールを自分たちで作ることから始めましょう。自分たちで決めたということで守りやすくなります。また、話し合いが進むにつれ、忘れてしまうこともあるので、模造紙などに大きく書いて見えやすい場所に貼ると意識しやすいと思います。グランドルールに反したことをしてしまった人には注意をするよりも、書いてあるところを手で示して自ら気がつくようにしたほうがいいでしょう。
Q.目的、目標、進め方など、なんでもみんなで決めなければならないのでしょうか。
A.場合によっては、すでに決まっている場合もあると思います。その時は、最初に確認作業をするといいでしょう。全く説明しないというのはあり得ないことですが、資料として示すだけで「読めばわかるだろう」というのではなく、なぜこう決まったのかという理由を説明し、質問をしてもらうなどの相互の意思確認をすることで、話し合いや人間関係がうまくいくでしょう。
Q.「傾聴」って、「良く聴く」とか「心で聴く」っていう説明ですが具体的にはどうしたらよいのかわかりません。
A.頭の中で相手の言っていることを反復するとうまくいくと思います。そのためには、相手をしっかりと見て表情や動作なども観察する必要があります。最初は聞いているつもりが、段々と相手の話に対してのアドバイスや自分の意見、他の人がそのことについてどのように話していたかなどのことを考えがちです。最後まで相手の話に集中し、話を聞き終わってから、考えるようにしてみるとうまくいくと思います。傾聴に慣れてくると、意識せずに聴くことができるようになりますので頑張りましょう。
Q.正直言って「場を読む」ってわかりません。どうすればよいのでしょうか。
A.最初はみんなの様子を観察するといいと思います。ファシリテーターは全体を俯瞰的に見る必要がありますが、最初からそれは無理だと思います。一人一人の様子をしっかりと見てみましょう。その時に気をつけたいのは、不機嫌な人や自分に好意的だと思う人がいても、そこに感情移入しないことです。全ての人を同じように観察し、全体の雰囲気を掴むところから始めましょう。
Q.ブレーンストーミングという手法でみんなに意見を出してもらうのですが、うまくいかないことがあります。うまくいくコツを教えてください。
A. ブレーンストーミングという手法は、「自由奔放」「批判厳禁」「便乗歓迎」「質より量」の4つのルールで、アイディアを出していくものです。
1つ目のコツは、意見を「見える化」していくというものです。付箋に書いて意見をたくさん出すというテクニックはみなさん経験があるのではないでしょうか。付箋に書かずに、自由に話をして、意見をホワイトボードなどに書き留めていくというやり方もあります。何も書かずに自由に話すと、どのような意見が出たのか分からなくなり、対話ではなく会話になりがちです。
2つ目のコツは、ファシリテーターが効果的な質問をすることです。効果的な質問とは、いい質問をいいタイミングで出すことです。ブレーンストーミングの良いところはそれぞれの意見が影響を出し合って相互作用で新しいアイディアが生まれていくところにあります。その連想をつなげるためにはファシリテーターが質問を出して話を広げたり横道に逸れてしまった話を本質に戻していったりということをしなければいけません。
こう言えば必ずうまくいくという魔法の言葉はありませんが、何度も体験するうちにうまく質問ができると思います。
Q. 質問をしても誰も答えてくれません。そのような時には指名してもよいのでしょうか?
A. 会議などの場合は、指名しなければならない時もあると思います。指名する時のコツは、表情を読み取り、「何か言いたそうだな」と思われる人に対して心理的圧力をかけないように気をつけ、「どうでしょう?」「いかがでしょう?」などと声をかけてみましょう。あまりにも曖昧な質問だと答えにくいということもありますが、反対に問い詰めるような口調にならないようにも気をつけましょう。
全員が目を伏せて下を向いてしまっている時には、場づくりができていない場合が多いので、一旦休憩に入り(1分でも構いません)仕切り直しましょう。
ワークショップなどの場合は指名せずに、アクティビティなどをうまく取り入れ、場を和ませます。発言できる雰囲気を作るのが大切です。
リアルの場であれば、休憩中の雑談をさりげなく聞いておき、どこに問題があるのかを考えます。休憩時間はみんなにとっては休憩ですが、ファシリテーターにとっては、次の話し合いを良くするための情報収集の時間です。
Q. 質問の具体的な言い方を教えてください。
A.・オープン・クエスチョン→「どのような•••?」のように、話を広げる質問
・クローズド・クエスチョン→「あなたは•••ですか?」のように返事が「はい」「いいえ」になる質問
・拡大質問→「他に何が考えられますか?」これまでの意見以外を求めている。
・収束質問→「どれが重要でしょうか?」たくさんの意見の中から選ぼうとしている。
・仮定質問→「仮に〜だとしたらどうしますか?」否定的ではなく肯定的に
・強制質問→「あえて言えばどうでしょうか?」逃げられないように問いかける。
・リレー質問→「同じ意見の方はおられますか?」意見を繋いで問いかける。
全て一例ですので、友達同士で「こんなふうに質問すると、こう答えることができるよね」といった感じで質問の形を見つけてみてください。
Q. 合意形成というけれど、何なのかよく分からないし、多数決で決めるのが早くて好きです。
A.いい感じの雰囲気の場を作れ、たくさんの意見を引き出せて、わかりやすく整理もしました。けれど、意見をどのようにまとめたらよいのか分からないことってありますよね。よく「落とし所を見つける」という表現を使っている人もいますが、その時に「誰かの意見を選ぶ」のではなく「みんなが納得できる結論を作る」のが合意形成です。合意形成のためのさまざまなスキルがありますが、実は合意形成の成功の秘訣は、1、全員が肯定されている安全安心の場が作られている。2、意見がしっかり話され、全員が満足のいく対話になっている。3、意見がうまく整理されており、「見える化」などできるだけ情報がぶれないようになっている、という、3つの条件がクリアされているということなのです。ですから、最初の頃は、1、2、3がうまくいっていないことが多く、合意形成のスキルを使ってもうまくいかないことも多いと思います。そんな時には、多数決で決めることがあってもいいのではないでしょうか。その時の多数決のコツは、意見出しの後、整理してたくさんある意見を整理した後すぐに多数決をせず、意見の内容について一つ一つ議論を尽くしていく。熟議を重ねるうちに目的に合わないものや現実的ではない意見などがわかってくるので、自然に数が減ってきます。その後、一般によくやる手上げ方式ではなく、模造紙やホワイトボードに意見を書き出して、一人で複数票を持ち、誰がどの意見に賛成したのかを意識しないで済む方法で(例えばシールを貼るなど)投票をします。最後に得票が集中したものについて議論をして決めていきます。その時のコツは、参加者の表情を観察し、しっかりと意見を聞いていくことです。
Q. 会議の時、私はファシリテーターとして頑張っています。参加者はダンマリを決め込んだり、意見を考えてくれなかったりと全く協力してくれません。参加者は何もしなくてよいのでしょうか。
A.スケジュールに追われていることが多く、「まずは会議」ということが多いのですが、このような場合は会議の前にワークショップ型の話し合いをするなどでチームビルディングを行います。会議は会議のためにしているのではありません。何かの目的を達成するための手段なのです。その目的について、全員で話し合うといいでしょう。顔を合わせたことがない人ばかりであれば、最初に他己紹介などで人となりを知ってもらい、安全安心の場を作っていきます。その時にグランドルールや会議の進め方などについても話し合って決めていくといいでしょう。ファシリテーターを順番にやっていくという手もあります。ファシリテーターだけではなく、書記(ファシリテーション・グラフィッカー)、タイムキーパーなどの役割がありますので、みんなで分担を決めてもいいかもしれません。ファシリテーターと参加者は全く同じ立場で参加していること、会議は参加者が作り上げていくものだということを自覚してもらいましょう。「そんな時間はないです」と思うかもしれませんが、ワークショップをやったほうが結果的にはうまくいき、会議も早く終わると思います。「急がば回れ」です。
Q. 講座を受けてスキルは身に付けたのですが、実際の会議の時にはうまくいきません。
A.講座のようにいかないことは普通です。もしも教科書通りに進むときは、ファシリテーションのスキルを参加者に押し付けているかもしれません。自分でうまくいったという時ほど参加者は不満を持っているものです。
とはいえ、身に付けたスキルは実際の会議で役に立たなければ意味がありません。そのためには、「練習をしたい」と言ったうえで仲間や友人を誘いましょう。「今度みんなで遊びにいく場所を決める」などのテーマを設定し、練習するといいでしょう。テーマは、わかりきった結果になるものよりも結果が出にくいものにするのがコツです。多様な意見が出るので練習になります。
いつもの会議のメンバーで練習できると最も効果はあるとは思いますが、それができるメンバーであれば、すでに本番もうまくいっているかもしれません。
会議はテクニックだけではうまくいかず人間関係に左右されることが多いので、普段から人間関係を潤滑にしておくことも大切なコツです。
前もって、不満や希望を聞けるような雑談をしておくとファシリテーションをする時にも役に立ちます。
Q. 私たちの会議では最初に報告の時間があり、次に決定事項の時間を設けています。場合によっては報告に時間がかかってしまい、時間がないので前もって事務局が作った案を採決することになります。参加者が一方的に話を聞かされ、意見を言うこともできずに終わってしまうパターンです。意見を聞いていると会議が長引いてしまうので仕方がないとは思いますが、どうにかできますか?
A.会議には「報告会議」と「決定会議」があります。定例会議などは「報告会議」にあたるものが多いのではないでしょうか。報告会議と決定会議を分け、報告会議で話される内容は前もってメールを送っておき、内容は「全員が読んでいる」という前提で質問や意見を話すことにすると「報告会議」が一方的ではなくなります。
例えば1時間を予定している会議の場合、「1時間の会議なので報告の時間は20分にしませんか?」などの提案をしておき、「4つの報告があるので一人5分でお願いします。」と時間を明示しておくと話す方も時間を意識しやすくなります。最初に1分くらいの時間で、報告の優先順位を決めておくのも良いでしょう。メールを読むだけで済む案件などもあります。全てを同じように扱わずに参加者全員で優先順位を決めましょう。
決定事項についても同じように時間と優先順位を決めておきます。今決めなければならない訳ではない案件は次の会議に回すことができますし、40分ではとてもじゃないが決められない案件などは別に会議の日程を定めることで、しっかりとした話し合いをすることができます。そのようにして案件を整理し、今回の会議で決めなければならないものだけを話し合います。
会議を効率的に進めるコツは、準備をすることと、最初に「どの案件を何分で優先順位はどうするか」と言う話し合いをしておくことです。
ホワイトボードや模造紙に決めたことをしっかりと書き留め、全員に見せながら議事を進めるとうまくいきます。
Q. 「安全安心な場」「心理的安全性」などと言いますが、具体的にはどうすればいいのですか?
A.「場づくり」をしっかりするということに尽きるのですが、ファシリテーターの魔法の言葉というものがありますので、ご紹介いたします。
「正解、不正解はありません。」というものです。人は正解を話したいものです。正解を求めると「自分の意見は間違っているのではないか」と思い、話したくなくなるものです。ファシリテーターの一言で「何を言っても大丈夫」と感じることができれば成功です。場を盛り上げるためにわざと突拍子もないことを話す場合もありますが、そのような話も大歓迎だということを伝えることも大切です。なぜなら、周りをリラックスさせる効果があるからです。
他の方法として、グランドルールの一項目に「批判しない」と入れておくことです。意見に対して批判的なことばかり言う人がいると、その場は安全な場所ではなくなり安心できません。意見を言うと批判される、攻撃されると思ってしまうのです。場が崩れていると思ったらまずは1分ほど休憩を入れます。人は1分間黙っていると落ち着きます。その後で、グランドルールを指し示して「この項目を思い出してください」と静かに話しましょう。その時に批判をしている人をじっと見たりして、その人を悪者にしてはいけません。おそらく、うっかりと批判してはいけないことを忘れていただけなのです。それでも気がつかなければ、グランドルールを見せることを繰り返しましょう。場の中に「批判しない」という空気が生まれてくるでしょう。
Q. オンラインで会議をうまく運営する方法を教えてください。
A.オンラインの場合は、まずは気にしないといけないのが、ネット環境のことでしょう。全員が同じ環境で参加しているわけではありません。「パソコンからお願いします」と言っておいてもスマホから参加する人もいます。私の体験では、オンラインの授業で「何か雑音が入る」と思ったら、学生がドライブデートをしながら参加していることがわかった時もあります(笑)
もちろん、「パソコンからの参加をお願いします」というアナウンスは大切ですが、そこに頼ってしまうと大変なことになります。例えば、資料を見ながらの検討をしようとした時に、「パソコンだから見ることができるはず」と思わずに、前もって資料を送り、読んでおくことなどをお願するといいと思います。
画面に顔を出す、ミュートを外すということをお願いしましょう。ファシリテーションは、表情、声の調子、動作など複合的なものを見ていかなければできません。オンラインで良いこともあります。それはマスクがないことです。マスクをしていると目の表情だけで判断しないといけないこともあります。表情を読むという意味ではオンラインの方が有利かもしれません。
画面越しで一番困るのは「目線が合わない」ことではないでしょうか。これは自分の画面の中で相手を見て話すしかないと思います。そして、話している人をアップにせず、全員が画面に映るような設定にしておくことが大切です。画面に全員映っていても表情がわかる大きさにしようとすると、大人数の会議はむずかしいので、人数調整をしましょう。
オンラインでは発言と発言の間に「・・・」2、3秒の沈黙ができます。また、盛り上がると言葉がかぶることもあります。そんなことが度重なると、発言すること自体が嫌になってしまいます。それを防ごうと思うならば、発言の間にファシリテーターが発言者に促す言葉をかけることです。すると安心して話すことができるようになります。
オンラインでは模造紙やホワイトボードに書くことができません。今ではグーグルドライブなどオンラインの見える化ができるたくさんの良いツールが出ていますので検索して使ってみてください。最も簡単に使えるのはチャットに書き込んでいく方式です。
ファシリテーションは、オンラインであっても対面であっても基本は同じです。これからは、対面で会うことのない知人が増えていく時代ではないでしょうか。
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